火は早めに消さないと [トルストイ]

火は早めに消さないと [トルストイ]

たまご1個

ことの始まりは「たまご1個」でした。

むかしから、仲良く隣りあい、互いに助けあって暮らしていた 農家の家族。 ある日、ガブリーロとイワンの家が、たまご1個をめぐってけんかになった。 けんかはだんだんとエスカレートし、ついには大きな事件に‥‥。 村の半分が燃えてしまったのです。

長男の嫁は働きもの

イワンの長男の嫁は働きものでした。 嫁がとくにかわいがっていためんどりが、ある日たまごを産みませんでした。 「姉さんのとりは、となりの庭でたまごを産んでから、こっちにもどってきた」という弟の言葉から端を発して、次々に事件は発生していきます。 どちらが悪い?どちらも悪い? 結局、お互いに「自分の方が正しい」という気持が相手を傷つけ、心の溝を深くしていきます。 双方の怒りはどんどんと大きく膨れ上がり、最後にガブリーロが隣家に放火をしてしまい、なんと村の半分が火事で焼けてしまったのです。

父親が忠告

イワンの父親が忠告します。 「おまえらはくだらねぇことで、大さわぎをしているぞ!」 しかし怒りと憎しみでいっぱいのイワンの心には通じませんでした。 お互いがあれこれと、あることないこと訴えあって裁判が続き、お互いの生活はメチャクチャに破壊されてしまいます。 やがて、それは大人だけに留まらず、子どもたちまでが憎しみあうのです。 憎しみが膨れ上がり誰にもとめられなくなってきたころ、イワンの心にようやく父親の言葉が届くようになります。 「けんかなんてものは片方だけが悪くて起きるものじゃねえ」

イエス・キリストのことば

イエス・キリストのことばに「あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい」とあります。 「叩きたいだけ、叩かせたら、そのうち相手の良心がとがめてくる」イワンの父の言葉です。 火事の後に父親は言います。 「今度のことはいったいだれの罪だね」 イワンは相手を責める事をやめ、「おれの罪だよ!」と泣き崩れたのでした。

『人はそれぞれ自分の欲に引かれ、おびき寄せられて、誘惑されるのです。欲がはらむと罪を生み、罪が熟すると死を生みます』                  ヤコブの手紙1章14~15節                  (新改訳聖書©新改訳聖書刊行会)

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