エーリヒ・ケストナーと言えば「エーミールと探偵たち」や「飛ぶ教室」を思い出される方がいらっしゃるかもしれませんが、それに劣らず子供たちに読まれてきた作品に、この「ふたりのロッテ」があります。 この作品は今までに数回映画化されてきており、児童文学としてはかなり恵まれた作品であると思います。 また作品の中に離婚という大人の問題を持ち込んだということで、発表当初よりかなりの議論を呼び起こしました。
しかし、その現実的な世界での子供たちの活躍を通して、子供たちの内にある可能性を引き出そうとしたところに、今までの写実主義的な作品とはまた違った部分を感じさせられます。
ある夏休みのスイスでの林間学校で、二人の女の子が出会いました。 驚いたことにその二人は、髪の毛を除けば、あとはまったく見分けがつかないほど、似ていたのです。 実のところ、二人はふたごの姉妹だったのですが、彼女たちがまだ赤ん坊の時に、両親が離婚したため別々に引き取られていたのでした。
二人はお互いの生い立ちについて話し合っていくうちに、そのことに気付き、なんとかして両親を仲直りさせようとします。
そしてそのために、二人だけの秘密の計画を立てます。 二人がお互い入れ代わって、一人は知らない父のもとに、もう一人は母のもとへと帰っていったのでした。 もちろん、性格や生活環境がまったく違うわけですから、それこそ大変なのですが、二人は両親を仲直りさせるために、どんな労苦もいとわず、一生懸命にがんばり通したのでした。
やがて、二人が入れ代わっていることが両親にも分かり、びっくりさせられますが、子供達の素晴らしい愛情を通して二人は仲直りし、もう一度一緒に暮らす決心をします。 一度離ればなれになった二人をもとに戻すということは、とうてい考えられないことですが、その不可能に近いことを可能にしたのは、実に子供たちの愛と犠牲だけがなし得た事なのでした。
聖書は、神様から遠く離れてしまった私たちの罪をゆるし、神様との正常な関係に引き戻すため、神のひとり子、イエス・キリストが人として来られたことを語っています。
そこには、イエスさまの大いなる愛と犠牲が満ち溢れているのです。
「ふたりのロッテ」 ケストナー著(岩波書店)